アセトアミノフェンの効果と副作用。からだにやさしい市販薬の選び方
痛み止めや風邪薬のパッケージで目にすることが多い「アセトアミノフェン」は、成人だけでなく赤ちゃんや小児、妊婦さんに使用することも可能な、からだにやさしい解熱鎮痛成分です。
痛み止めとしての性能、気になる副作用はどのようになっているのでしょうか。
アセトアミノフェンの特徴、副作用、使用上の注意点についてチェックしてみましょう。
この記事の目次
アセトアミノフェンは解熱鎮痛剤や風邪薬に配合される成分
アセトアミノフェンは、痛みや発熱をしずめる作用を持つ成分です。
1877年と早くに開発された解熱鎮痛成分で、効能には実績があります。その点では歴史の浅い解熱鎮痛成分よりも信頼のおける薬といえるでしょう。
医療用医薬品(病院で処方される薬)では「カロナール」「アセトアミノフェン」という製品名で、子どもから大人まで鎮痛や解熱に広く用いられる成分です。
OTC医薬品のアセトアミノフェンが配合されている解熱鎮痛剤では、次に挙げる製品などがあります。
- アセトアミノフェン単剤の製品
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- 「バファリン ルナJ」(ライオン)
- 「タイレノールA」(ジョンソンエンドジョンソン)
- 「ラックル速溶錠」(日本臓器製薬)
▼バファリン ルナJ
▼タイレノールA
▼ラックル速溶錠
- アセトアミノフェンとほかの有効成分が配合されている製品
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- 「バファリン ルナi」(ライオン)
- 「ノーシン」「ノーシンホワイト」「小中学生用ノーシンピュア」(アクラス)
- 「新セデス錠」「セデスV」(シオノギヘルスケア)
- 「ナロン」(大正製薬)
▼バファリン ルナi
▼ノーシン、ノーシンホワイト、小中学生用ノーシンピュア
▼新セデス錠、セデスV
▼ナロン
解熱鎮痛剤のほかには、風邪薬や小児用の解熱剤にも配合されています。
痛み止めとしては、イブプロフェンやロキソニン(ロキソプロフェン)、アスピリンほど名前が通っていないかもしれませんが、このように幅広い製品に配合され、私たちの健康をサポートし続けている薬なんですよ。
アセトアミノフェンの痛みをしずめる仕組み
アセトアミノフェンは、非ピリン系(アニリン系)の解熱鎮痛成分です。
市販の解熱鎮痛剤に使われる成分のほとんどは「非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDまたはNSAIDs)」で、代表的なものにロキソプロフェンやイブプロフェンなどがあります。
アセトアミノフェンは、これら一般的なNSAIDとは痛みをしずめる仕組みが異なり、そのために効き目、使われ方、副作用も少し特徴が異なっています。
NSAIDは、痛みや炎症の原因物質「プロスタグランジン」を生成する酵素「シクロオキシゲナーゼ」のはたらきを阻害することで、痛みや炎症をしずめます。
対して、アセトアミノフェンはシクロオキシゲナーゼを阻害するのではなく、脳にはたらきかけて痛みや発熱をしずめているものと考えられています。
そのため、一般的なNSAIDのような抗炎症作用は持ち合わせておらず、用途は解熱作用と鎮痛作用のみになります。また解熱効果はすぐれていますが、鎮痛効果はそれほど強くはありません。
ただ、プロスタグランジンに作用しないため、一般的なNSAIDのように胃粘膜を保護するプロスタグランジンを抑えて胃を荒らす副作用がないのが、大きな強みです。
また比較的安全性の高いことが確認されているため、ほかのNSAIDと異なり15歳未満の小児や妊婦に使用することができます。
アセトアミノフェンはどのような用途で使われている?
解熱作用と鎮痛作用を持つアセトアミノフェンは、医療用医薬品またはOTC医薬品で次のような用途で用いられています。
効能・効果 |
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用法・用量 | 上記の1の場合 成人にはアセトアミノフェン1回300~1000mgを経口投与 (1日の上限4000㎎) 上記2の場合 1回300~500mgを頓用 (1日の上限1500mg) 上記3の場合 小児の体重1kgにつき1回あたり10~15mg投与 (1日の上限体重1kgあたり60㎎) ※小児は成人の量を超えない |
参照…あゆみ製薬株式会社「カロナール原末(日本薬局方アセトアミノフェン)」添付文書
アセトアミノフェンはほかの解熱鎮痛成分に比べると効き目がおだやかなので、ほかの成分と一緒に配合して鎮痛効果を強めることも少なくありません。
その代表的な処方に「ACE処方」があります。ACE(エーシーイー)とは
A:アセトアミノフェン
C:カフェイン
E:エテンザミド
の頭文字をとって並べたものです。
エテンザミドはサリチル酸系の解熱鎮痛成分で、胃に負担をかけにくいのが特徴です。カフェインは痛みをしずめる作用は持ちませんが、鎮痛成分の効きを良くする役割があります。
ACE処方は、ほかのNSAIDと異なりプロスタグランジンにあまりはたらきかけないので、比較的胃にやさしい処方として解熱鎮痛製剤や風邪薬に使われます。そのほか、解熱鎮痛剤ではイブプロフェンとの組み合わせも見かけます。
ほかの成分と自在に組み合わせて効き目を調節することができるのも、アセトアミノフェンの持ち味といえるでしょう。
NSAIDとは異なるアセトアミノフェンの特長とは
アセトアミノフェンには、ほかの解熱鎮痛成分にはない特長がいくつかあります。
- 15歳未満・妊婦・授乳婦も服用できる
- 眠くならない
- 胃腸障害を起こさない
- 心臓・肝臓・腎臓の機能が低下している人も使用できる場合がある
15歳未満・妊婦・授乳婦も服用できる
解熱鎮痛成分の中には、小児・妊婦・胎児に対する安全性が確立されていないものが多く、使用することは「禁忌」とされることがほとんどです。
アセトアミノフェンは小児・赤ちゃん・妊婦に対する安全性がある程度確立されているので、使用することに制限はありません。授乳中も服用することができます。
ただ、どの薬にもいえるように100%安全というわけではないので、むやみに使っていけないことは、いうまでもありません。
眠くならない
アセトアミノフェンは眠気を起こす副作用がありません。仕事中や車の運転をするときも安心して使えます。また、中高生の学校生活や勉強のさまたげにもなりません。
心臓・肝臓・腎臓の機能が低下している人も使用できる場合がある
一般的なNSDIDは、心臓・肝臓・腎臓の疾患がある人に投与すると症状の悪化を引き起こす可能性があるため、使用は禁忌とされていることがほとんどです。
アセトアミノフェンはほかのNSAIDと薬の効く仕組み(作用機序)が異なるため、心臓・肝臓・腎臓の機能が低下している人にも使用できる場合があります。(重篤な疾患の場合は使用することはできません。)
制約が少ないところもアセトアミノフェンの魅力といえるでしょう。
アセトアミノフェンでどのような副作用が起こる?
アセトアミノフェンは、赤ちゃんの熱さましに使えるほど安全性の高い成分です。
ただし、副作用がまったく起こらない薬は存在しないので、アセトアミノフェンで起こりうる副作用にはどのようなものがあるのか知っておかなければなりません。
たとえば、アセトアミノフェンは次に挙げる副作用に注意が必要です。
そのほか、まれに血液の異常(チアノーゼ、出血が止まりにくいなど)、嘔吐、下痢、過敏症などが起こる可能性もあるとされていますが、一般にアセトアミノフェンが副作用を起こす頻度はそれほど高くはありません。
アセトアミノフェンの重篤な副作用
ごくまれですが、体質や体調によってはアセトアミノフェンの使用後に重篤な副作用を起こす可能性もあります。ほかの解熱鎮痛成分と同様の重篤な副作用に注意しましょう。
副作用の種類 | 特徴的な症状 |
---|---|
ショック (アナフィラキシー) |
服用後すぐに かゆみ、じんましん、息苦しさ などが起こる |
無顆粒球症 | 発熱、のどの痛み、倦怠感 出血、青あざなど |
スティーブンス・ジョンソン症候群 (皮膚粘膜眼症候群)、 中毒性表皮壊死融解症、 急性汎発性発疹性膿疱症 |
高熱、目の充血、唇のただれ、 のどの痛み、皮膚の広範囲の発赤・発疹 小さい水疱がたくさん出る など |
肝機能障害 | 倦怠感、黄疸、かゆみ、発疹、褐色尿 など |
間質性肺炎 | からだを動かすと息切れ、咳が起こり 倦怠感、発熱などが持続する |
腎障害 | 全身のむくみ、倦怠感、尿量の減少、 など |
ぜんそく | 息をする時ヒューヒューと音が出る |
ほかのNSAIDに比べると、肝機能障害の発症頻度が高いことがわかっているので、肝機能が低下している人は、医師の指示に従って適切に使用する必要もあります。
アセトアミノフェンを使用する時の注意点は
安全性が高いといわれるアセトアミノフェンですが、使用上の注意点は必ずチェックしておきましょう。
アセトアミノフェンの注意事項は、このような内容となっています。(OTC医薬品の場合)
してはいけないこと
病気が悪化したり重篤な副作用を起こしたりするおそれがあるため、次に挙げる人は使用することはできません。
- アセトアミノフェンでアレルギー症状を起こしたことのある人
- 解熱鎮痛剤やかぜ薬でぜんそくを起こしたことのある人
相談すること
次の項目にあてはまる人は、アセトアミノフェンを使用する前に薬剤師または登録販売者、医師に相談するよう注意が促されています。
- 病院の治療を受けている人
- 妊婦、または妊娠の可能性がある人
- 高齢者(65歳以上)
- 薬などでアレルギー症状を起こしたことのある人
- 胃・十二指腸潰瘍、血液の病気、肝臓病、腎臓病の診断を受けている人
使用する際の注意事項
アセトアミノフェンを使用する場合は次の注意事項を守らなければなりません。
- 症状の出ているときのみに使用する
- ほかの解熱鎮痛薬、かぜ薬、鎮静薬の服用中には使用しない
- 薬の服用前後に飲酒しない
- 長期連用しない
5~6回服用しても症状が改善しない場合は、薬の使用を中止して薬剤師または医師に相談しましょう。解熱鎮痛剤では対応できないほかの病気がひそんでいるかもしれないためです。
また、服用後に副作用と思われる症状がみられた場合はすぐに使用を中止し、薬剤師か販売登録者、医師に相談します。
なるべく副作用が出ないようにするには、空腹時をさけて食後に服用するとよいでしょう。
基本的にはほとんどの人が安心して使える薬です。だからといって、勝手に増量したり頻繁に使ったりしても大丈夫、というわけではありません。
また、15歳未満の小児、65歳以上の高齢者は薬の作用を受けやすいので、アセトアミノフェンも慎重に投与します。
アセトアミノフェンはほかの解熱鎮痛成分や補助成分と一緒に配合されることが多いので、薬を選ぶ際はほかの成分が持つ副作用(胃腸障害、眠気、アレルギーなど)にも注意しましょう。
からだへのやさしさで選ぶならアセトアミノフェンがおすすめ
アセトアミノフェンは、人気の高いロキソプロフェンやイブプロフェンと比べると痛みをしずめる作用がおだやかで、強い痛みにはあまり適していません。
ただしアセトアミノフェンならではのメリットも多く、次のような人にはおすすめしやすい成分といえるでしょう。
- 胃の弱い人
- 空腹時でも飲める痛み止めが欲しい
- 眠くなるのが困る
- 強い薬を飲むのは不安
- 生理痛や頭痛がそれほど重くないとき
- 15歳未満の人・高齢者
- 妊娠中の人・授乳中の人
もちろん人によっては体質や体調に合わない場合もあります。安全に使用するため、市販薬を購入する際は薬剤師や登録販売者に相談するなどして、効果とリスクのバランスを理解したうえで購入されることをおすすめします。