ガンマリノレン酸の効果と副作用。PMSや生理痛を改善してくれる
「ガンマリノレン酸」は、あまり聞き慣れない名前ですが、実は私達の体内にも存在している身近な成分です。
健康成分として、早くからアトピー性皮膚炎を改善することで知られていました。また近年は、PMSや生理痛など女性の不調を緩和することで注目を浴びるようになってきています。
ガンマリノレン酸はどのような特徴があり、どの食品から摂取できる成分なのでしょうか。ガンマリノレン酸の特徴、効果、気になる副作用や含まれている食品について説明いたします。
この記事の目次
PMSや生理痛の緩和に役立つガンマリノレン酸の特徴
γ(ガンマ)リノレン酸は、特定の植物油に含まれている脂肪酸です。
「リノレン酸」という脂肪酸の中で、1番目のα(アルファ)、2番目のβ(ベータ)に続いて3番目に発見されたので、3番目を意味する「ガンマ」が名前につけられています。難しそうな名前に見えますが、命名の理由は意外に単純なのですね。
ガンマリノレン酸は、数ある脂肪酸の中で「多価不飽和脂肪酸」の「オメガ6系(またはn-6系と呼ばれる)」に分類されている体に良い油です。
そして女性の場合は月経前症候群(PMS)や生理痛を緩和する効果が期待されている成分です。
脂肪酸から作られる生理活性物質には、いわゆる「善玉」と「悪玉」があり、善玉の生理活性物質は女性の健康を維持してくれますが、悪玉の生理活性物質はPMSや生理痛を引き起こします。
ガンマリノレン酸は善玉の生理活性物質を増やす作用を持っていますが、ガンマリノレン酸さえ摂取すれば体調が良くなる、というものでもありません。
ガンマリノレン酸はほかの脂肪酸とかかわりあいながら体内で作られる成分で、油のとり方が間違っていると、悪玉の生理活性物質が増えやすくなります。ですから健康のためには、脂肪酸の仕組みを知ったうえで適切な種類の油を選ぶことが大切なのです。
脂肪酸は脂質の主成分
脂肪酸とはどのような成分なのか簡単におさらいしておきましょう。脂肪酸は主に次のような役割を持つ栄養素です。
- エネルギーの材料になる
- 細胞膜を構成する
- 生理活性物質の材料になり、体の機能をスムーズにはたらかせる
- 脳神経のはたらきを高める
- 脂質に含まれるコレステロールのはたらきを調整する
脂肪酸は、脂質の大半を構成する成分です。脂質は肥満や生活習慣病を招く悪者として嫌われがちですが、生命を維持するために欠かせません。
女性の体では、脂肪酸が脳の下垂体や卵巣のはたらきを整えて女性ホルモンの分泌を促進させたり、生理活性物質が子宮の機能を調節させたりと、女性特有の機能にも大きく関係しています。
そのため、女性がダイエットのために良かれと思って食事から油分をとことんカットすると、下垂体や卵巣が機能しなくなって女性ホルモンが分泌されなくなってしまいます。摂り過ぎも良くありませんが、適量の油は摂取しないとダメなんですよね。
「体に良い」と言われる不飽和脂肪酸とは?
脂肪酸には「飽和(ほうわ)脂肪酸」と「不飽和(ふほうわ)脂肪酸」の2種類があり、ガンマリノレン酸は不飽和脂肪酸に分類されます。
飽和脂肪酸は、バターや牛脂などの動物性脂肪に多く含まれます。摂り過ぎると悪玉コレステロール(LDLコレステロール)を増やして血液をドロドロにし、動脈硬化のリスクを高めるので「摂り過ぎは体に良くない油」といわれます。
不飽和脂肪酸は、主に植物性の脂質、青魚の油などに含まれます。血液をサラサラにする善玉コレステロール(HDLコレステロール)を増やし、生活習慣病の原因になる悪玉コレステロールや中性脂肪を抑制する作用があるので、一般に「体に良い油」と呼ばれます。
そのため脂質を摂取するなら、動物性脂肪よりもなるべく植物性の油脂や青魚の油を選ぶことがすすめられています。
ガンマリノレン酸が属する「オメガ6脂肪酸」の特徴は
不飽和脂肪酸は「一価不飽和脂肪酸」と「多価不飽和脂肪酸」に分かれ、さらに多価不飽和脂肪酸は「ω(オメガ)3系」「オメガ6系」などに分けられています。
オメガ3脂肪酸とオメガ6脂肪酸は、どちらも生理活性物質の生成にかかわっていますが、それぞれ含まれている食品と性質が異なっています。
- オメガ3脂肪酸
- オメガ3脂肪酸には、青魚に含まれるDHAやEPA、エゴマや亜麻仁に含まれるアルファリノレン酸などの種類があります。
オメガ3脂肪酸は、痛みや炎症を起こす「プロスタグランジンE2」「ロイコトリエン」といった悪玉の生理活性物質が過剰に作られるのを防ぎます。
生理痛や頭痛を起こしているのはプロスタグランジンE2なので、生理やPMSの時にオメガ3脂肪酸を意識して摂取すると、生理痛や頭痛の緩和に役立ちます。特に青魚からDHAやEPAを摂取するのが効果的です。
- オメガ6脂肪酸
- ガンマリノレン酸が属するオメガ6脂肪酸も、体内で生理活性物質に変換されて体の調子を整える役割を持ちます。
オメガ6脂肪酸には、肉や魚に含まれるアラキドン酸、植物油に含まれるリノール酸やガンマリノレン酸などがあります。ガンマリノレン酸は特定の植物油から摂取できますが、ほとんどは体内でリノール酸から作られています。
ただ、オメガ6脂肪酸は、善玉・悪玉のどちらの生理活性物質にも変換される成分なので、摂取の仕方には注意が必要です。たとえば、アラキドン酸を過剰摂取すると、炎症を起こすプロスタグランジンE2など悪玉の生理活性物質に変換されてしまいます。
またリノール酸を大量に摂取したとき、食事のバランスが乱れたときにはリノール酸やガンマリノレン酸がアラキドン酸に変換されやすくなるため、悪玉の生理活性物質が増えてPMSや生理痛が起こりやすくなってしまいます。
オメガ6脂肪酸ばかり摂り過ぎるのも良くありません。オメガ6脂肪酸を善玉の生理活性物質に変換するには、日頃から規則正しい食生活を心がけ、オメガ6脂肪酸の代謝を整えるオメガ3脂肪酸もバランス良く摂取していくのがポイントです。
肉やバターなどの動物性脂肪は摂取を控えめにし、魚を積極的に食べたりオメガ3脂肪酸とオメガ6脂肪酸をバランス良く摂取すると、ガンマリノレン酸の効果・効能が発揮されやすくなります。
ガンマリノレン酸の効果効能。肥満やアレルギーまで
ガンマリノレン酸は主に次の効果・効能が期待されています。
- PMSの症状や生理痛を緩和する
- 肥満や生活習慣病を予防する
- アレルギー症状を緩和する
女性特有の不調以外に、日本人の国民病と呼ばれる生活習慣病やアレルギーを予防・改善する効果も期待できるのは嬉しいですね。
PMSの緩和
ガンマリノレン酸は、PMSの症状や生理痛を緩和する効果が期待されています。
ガンマリノレン酸は、体内で代謝されて「ジホモ-ガンマリノレン酸」に変換され、次に善玉の生理活性物質「プロスタグランジンE1」に変換されます。
「プロスタグランジンE1」には、女性ホルモンのバランスを整える作用と生理痛や頭痛を起こす「プロスタグランジンE2」の過剰なはたらきを抑制する作用があります。
ガンマリノレン酸を摂取すると、プロスタグランジンE1のはたらきによって、PMSに伴う下腹部痛、頭痛、乳房の痛み、また生理痛や生理時の頭痛を緩和する効果が期待できるようになります。
肥満・生活習慣病の予防
ガンマリノレン酸は「善玉」のプロスタグランジンを増やすことで、高血圧、動脈硬化、糖尿病などの生活習慣病を予防する効果をもたらします。
善玉のプロスタグランジンは、管を拡張させて血液の流れをスムーズにし、血圧、血糖値、悪玉コレステロールや中性脂肪を抑制します。
また代謝を促進させる作用があるので、脂肪が燃焼されやすくなって肥満が予防でき、ダイエット中の女性も安心して摂取することができます。
アレルギー症状の緩和
ガンマリノレン酸から作られるプロスタグランジンE1は抗炎症作用があり、アレルギーや炎症を起こすロイコトリエンやプロスタグランジンE2のはたらき阻害します。
ガンマリノレン酸を摂取すると、プロスタグランジンE1が増えてアレルギー症状が抑制され、花粉症やアトピー性皮膚炎などのアレルギー症状を緩和する効果が期待できるようになります。
ガンマリノレン酸の副作用。安心して利用するための注意点
ガンマリノレン酸に副作用はあるのでしょうか?
ガンマリノレン酸は体に必要な栄養素のひとつなので、薬のような副作用が起こる心配は特にありません。一定期間に適量のガンマリノレン酸を摂取する場合は安全とされています。
ただ、オメガ6脂肪酸を大量に摂取したときは、善玉コレステロールを減ってしまったり、アラキドン酸が悪玉のプロスタグランジンに変換されやすくなったりするので注意が必要です。
アラキドン酸の多い動物性食品を食べ過ぎるのは良くありません。またリノール酸を大量に摂取した場合もアラキドン酸に変換されて悪玉のプロスタグランジンを増やすので、植物油の選び方には注意が必要です。
- げっぷ
- 胃もたれ
- 吐き気
- 軟便
- 下痢
といった軽い胃腸障害の症状が起こることもあります。
もしガンマリノレン酸を摂取した後に気になる症状がみられた場合は、ガンマリノレン酸の摂取を中止して、受診して医師に相談することがすすめられます。
ガンマリノレン酸をより健康的に利用していくためには、色々な油を少しずつ摂取して、オメガ3脂肪酸とオメガ6脂肪酸をバランス良く体に取り込むことが大切です。
そうすれば悪玉と呼ばれる生理活性物質が過剰に増えるのを抑制し、善玉の生理活性物質によってホルモンバランスを整えたりPMSを防いだりする効果を高めることができます。
ガンマリノレン酸が含まれる食べ物。おすすめの摂取法
ガンマリノレン酸はどのような食品から摂取できるのでしょうか。
実は、ガンマリノレン酸は身近な食品にはほとんど含まれておらず、摂取できる食品もかなり限られています。
- ガンマリノレン酸を含む食品
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- 月見草オイル
- ボラージオイル
など
ガンマリノレン酸を直接摂取するならば、食用油として市販されている月見草オイルか、月見草オイルをサプリメントに加工したものを利用する方法が一般的です。
月見草オイルは、アカバナ科マツヨイグサ属のツキミソウという植物の種子から搾取した油で、日本人にはあまりなじみがありません。
▼ツキミソウ
月見草の種子には高濃度のガンマリノレン酸が含まれ、早くからヨーロッパでアレルギー性の皮膚疾患の民間療法に使われてきました。アトピー性皮膚炎にはサプリメントも利用されています。
ボラージオイルは、ガーデニングでも人気のあるハーブ「ボラージ(ボリジ・ルリヂシャ)」の種子から搾取した油です。主に化粧品として外用に使われるオイルですが、サプリメントからも摂取することができます。
ガンマリノレン酸でPMSの症状を緩和する場合は、ビタミンB群やマグネシウムも意識して摂取するとプロスタグランジンを抑制するとより効果的です。
私達は普段、綿実油やコーン油など身近な植物油から十分な量のリノール酸を摂取し、体内でガンマリノレン酸を作ることができています。
ただし現代人は、リノール酸の摂り過ぎが示唆されているので、リノール酸が豊富な油脂は意識してたくさん摂取する必要はなく、少量を使う程度で問題ありません。
- リノール酸を豊富に含む食品
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- コーン油
- サフラワー油(べにばな油)
- 大豆油
- キャノーラ油
- サラダ油
- マヨネーズ
現代人のアレルギーの増加には、リノール酸の過剰摂取も影響しているのではないかと考えられています。
ガンマリノレン酸は特にこんな人におすすめ
次に挙げる症状が気になる人は、特にガンマリノレン酸の摂取をおすすめします。
- PMSが起こりやすい人、PMSの症状が強い人
- 生理痛の強い人
- アレルギーのある人
- 肥満や生活習慣病を予防したい人
PMSが起こりやすい人、PMSの症状が強い人は、血液中のガンマリノレン酸の濃度が低いことも分かっています。
体内で作ることができるガンマリノレン酸は、通常の食生活をとっていればあまり不足する心配は少ない成分です。
ただし、植物油を食事に取り込んで規則正しい食生活を心がけているにもかかわらず、PMSの症状や生理痛が強い人、アトピー性皮膚炎などのアレルギー症状が治りにくい人は、ガンマリノレン酸を作ることができていないかもしれません。
リノール酸をガンマリノレン酸に変換するには、体内に「デルタ6デサチュラーゼ」という酵素が必要で、ガンマリノレン酸をあまり作ることのできない人は、この酵素がはたらきにくい体質の可能性があります。
気になる人は、月見草オイルやボラージオイルから直接ガンマリノレン酸を補給することをおすすめします。
PMSには安心して摂取できるガンマリノレン酸
最後にガンマリノレン酸の特徴をおさらいしておきましょう。
- 痛みを起こすプロスタグランジンを抑制する
- 月見草オイル、ボラージオイルに含まれる
- 身近な植物油に含まれるリノール酸から体内で作られることが多い
- リノール酸・アラキドン酸の摂り過ぎは禁物
- ガンマリノレン酸を作るのが不得意な体質の人はサプリメントで摂取を
- 色々な油を少量ずつ摂取して、ガンマリノレン酸の代謝を促進させよう
体にもともと存在するガンマリノレン酸によってPMSの症状を緩和できるのは、薬を使うよりも安心感がありますね。
ただし、PMSはなんらかの病気が原因になっている場合も考えられるので、重い症状が長く続く場合は、ガンマリノレン酸を利用する前に必ず受診して医師に相談してください。