生理痛を和らげるならイブプロフェン。特徴と副作用を知り薬を選ぼう
イブプロフェンは、痛み止めに配合される有効成分のひとつ。薬のパッケージやTVCMなどで目にすることが多い名前ですよね。
薬局にはたくさんの痛み止めが販売されていますが、そのなかでも生理痛にはこのイブプロフェンを配合したものがおすすめなんです。
なぜ生理痛にイブプロフェンが良いのか、イブプロフェンはどのような効能・副作用を持つ成分なのか、イブプロフェンの特徴をチェックしてみましょう。
この記事の目次
痛み止めに配合されている「イブプロフェン」とは
イブプロフェンは、高熱を下げる作用、痛みをしずめる作用、炎症をおさえる作用を持つ内服用の解熱鎮痛薬です。
病院で使われる「医療用医薬品」と薬局で販売している「OTC医薬品(一般的な市販薬)」の2種類がありますが、どちらも成分や1日あたりの使用量などは基本的に変わりません。
市販のイブプロフェンは、医療用医薬品を市販向けに切り替えた、いわゆる「スイッチOTC医薬品」に分類される薬です。
病院でもらえる薬と同じ高い効き目が得られるうえに薬局で手軽に購入でき、価格も手ごろなところが魅力といえるでしょう。
イブプロフェンは、市販の解熱鎮痛剤に使われることがとても多い薬です。テレビなどでも「イブプロフェン配合」とうたっている痛み止めのCMをよく目にしますよね。
たとえば、イブプロフェンを配合した代表的な解熱鎮痛剤には次の製品があります。
- 「イブ」シリーズ(エスエス製薬)
- リングルアイビー(サトウ製薬)
- バファリンルナi、バファリンプレミアム(ライオン)
- セデスキュア(シオノギヘルスケア)
- ナロンエースR、ナロンメディカル(大正製薬)
- ノーシンピュア(アクラス)
これらの中に女性をターゲットにした製品が複数あるように、イブプロフェンはどちらかというと生理痛や頭痛に悩む女性に使いやすい成分だといえます。
イブプロフェンの特徴、薬理作用(痛みを止める仕組み)について、少し詳しくみてみることにしましょう。
イブプロフェンの痛みをしずめる仕組み
OTC医薬品に配合されている解熱鎮痛成分の大半は「非ステロイド性消炎鎮痛剤(NSAIDまたはNSAIDs)」と呼ばれる薬で、イブプロフェンもそのひとつに含まれます。
NSAIDの中では「ロキソニン」と同じプロピオン酸系の成分に属し、すぐれた効き目を持っています。
イブプロフェンが持つ解熱作用、鎮痛作用、抗炎症作用は、痛みや炎症を起こす物質「プロスタグランジン」の生成を阻害するというNSAIDの薬理作用によるものです。
プロスタグランジンは、生理のときに子宮を収縮させて経血を排出させる重要な役割を持っています。同時に痛みを感じさせる作用があるため、子宮の収縮が強くなるとプロスタグランジンの影響で生理痛が強くなってしまうのです。
NSAIDは、プロスタグランジンを生成する酵素「シクロオキシゲナーゼ」のはたらきを阻害することで、プロスタグランジンが過剰に増えるのを防ぎ、生理痛や頭痛などあらゆる痛みをすみやかにしずめます。
また、炎症や発熱を引き起こすのもプロスタグランジンが原因なので、NSAID系の解熱鎮痛剤を利用すると、痛みだけでなく炎症を同時にしずめたり、高熱を平熱にもどしたりすることができます。
イブプロフェンにはOTC医薬品と医療用医薬品がある
イブプロフェンという成分は、薬局で買える痛み止めの代表選手みたいな存在になっていますが、かつては病院で処方してもらわなければ使用することのできない薬でした。
医療用医薬品のイブプロフェン製剤には「ブルフェン」などがありますが、1985年にエスエス製薬がスイッチOTC医薬品に切り替えた「イブ」の販売を開始しました。
その後、イブプロフェンを配合したOTC医薬品が次々と登場し、私たちは受診したり処方せんをもらったりしなくても、医療用と同じ効き目のイブプロフェンが手軽に購入できるようになったのです。
ただし、OTC医薬品と医療用医薬品の効能が基本的に同じでも、病院で処方されるイブプロフェンと市販の解熱鎮痛剤では、用途や使用方法が少し異なります。
OTC医薬品 | 医療用医薬品 | |
---|---|---|
効能・効果 |
かぜの諸症状 月経痛 |
|
用法・用量 |
かぜ薬の1日最大量は450mg 解熱鎮痛剤の1日最大量は600㎎ (1回量の限度は200㎎) ※15歳以下は使用しない |
5歳~15歳未満の1日量は 200~600㎎ 成人の1日最大量は600㎎ |
医療用医薬品のイブプロフェンは、成人より少ない分量で5歳から処方することができ、鎮痛だけでなく炎症をしずめる目的で使われることが多いです。
一方、OTC医薬品のイブプロフェンは風邪薬や解熱鎮痛剤に配合され、処方せんなしで購入することができますが、15歳未満の人は服用することができません。
医療用医薬品・OTC医薬品ともに1日の最大量は15歳以上で600㎎、原則として1回量の限度は200㎎という基準があります。どのようなケースでも、これ以上の量でイブプロフェンを服用することはできません。
OTC医薬品を使う場合は消費者が自分で薬の管理をすることになりますが、私たちは安全に使用するため、正しい用法を守る必要があります。
OTC医薬品のイブプロフェンは、用法・用量に下記の1~3のパターンが定められています。
製品によって用法・用量が異なるので、薬を買うたびに必ず添付文書などをよく読んで、つねに正しい方法で服用するようにしましょう。
- 1回分150㎎×2~3回服用=1日量300~450㎎
(イブ・リングルアイビーなど) - 1回分200㎎×2回服用=1日量400㎎
(イブメルト・リングルアイビー200など) - 1回分200㎎×3回服用=1日量600㎎
(リングルアイビーα200など)
たとえば「限度は1日3回だけど、1日に4回飲む」「面倒くさいので1日分をまとめて一度に飲んでしまう」「効き目を強くしたいので規定の2倍飲む」といった正しくない使用法は、成分が体に負担をかけ、副作用が起こりやすくなるのでしてはいけません。
またOTC医薬品の場合は、15歳以下の小児に使用することはできないので、中学生が使ったり、小児用の痛み止めの代用として半分に割って子どもに飲ませたりすることもできません。「少しくらいなら」「1回だけなら」というのもNGですよ。
生理痛におすすめな理由・イブプロフェンの特長
市販の解熱鎮痛剤はどれもよく似ていて、選ぶ時に迷ってしまいます。解熱鎮痛成分の特性は種類によって少しずつ異なっていますが、イブプロフェンには次のような特長があります。
- 早くよく効く
- 眠くならない
- 比較的胃にやさしい(胃にまったく負担をかけないわけではない)
- 生理痛に効きやすい
早くよく効く
市販の商品に劇的な効能の差はないといわれますが、代表的なNSAIDのイブプロフェン、ロキソニン、アセトアミノフェンを比べた場合、ロキソニンの鎮痛作用がもっとも強く、アセトアミノフェンはそれほど強くありません。
イブプロフェンはロキソニンと比較すれば鎮痛作用はおだやかなものの、十分に強い鎮痛効果を持っていて鎮痛作用が効き始めるのも早いので、生理痛や頭痛に早く効いてしっかり痛みをしずめてくれます。
眠くならない
生理時はホルモンや体調の関係で眠くなりやすい時期なのですが、解熱鎮痛剤は副作用で眠くなることが多いので、困っている人も多いと思います。
イブプロフェンは眠気をもよおす成分ではないので、眠くなるのが困るときにも安心して服用することができます。
ちなみに解熱鎮痛剤や風邪薬で眠くなるのは、補助成分の「鎮静成分」の効果や副作用によるものなので、鎮静成分が配合されていない薬を選べば眠くなることはありません。
比較的胃にやさしい
解熱鎮痛剤を飲むと胃が荒れて、腹痛や吐き気を起こすことがあります。これは、NSAIDの副作用で胃に負担をかけてしまうために起こります。
痛みを起こすプロスタグランジンのはたらきをおさえると同時に、胃の粘膜を保護する別のプロスタグランジンにまで作用して、胃が刺激を受けやすくなってしまうのです。
イブプロフェンもNSAIDなので、胃に作用して多少の負担をかけることはあります。しかし、ほかのNSAIDに比べると胃を荒らしにくいため、胃が弱い人でも安心して利用することができます。
胃の荒れを防ぐには、空腹時を避けて飲むのがコツです。
生理痛に効きやすい
イブプロフェンは子宮に移行しやすい成分といわれ、生理痛をしっかりしずめる効果が期待されています。
イブプロフェン系の解熱鎮痛剤は、このように生理痛に効きやすく、仕事や学校がある時に飲んでも眠くなりにくいことから、女性に支持されることが多くなっているのです。
イブプロフェンでどのような副作用が起こる?
イブプロフェンは解熱鎮痛剤の中でも、大きな副作用が起こりにくい成分とされていますが、人によっては服用後にごく軽度の副作用が起こったり体質に合わなかったりすることがあります。
また、ごくまれに重篤な副作用が起こることも示唆されているので、万が一の事故を防ぐためにも、使用する前には起こりうる副作用について正しく把握しておく必要があります。
イブプロフェンの服用後に起こることのある副作用
イブプロフェンの服用後にみられる主な副作用は、消化器の症状です。腹部の不快感、食欲不振、吐き気、嘔吐、下痢などの比較的軽い副作用を起こすことがあります。
これら消化器の症状は、イブプロフェンがプロスタグランジンをおさえて痛みをしずめる際に、胃粘膜を保護する機能まで低下させてしまうために起こります。
ただ、消化器症状の起こる頻度はそれほど高くありません。ブルフェン錠の場合、消化器症状に副作用の起こる頻度は0.1~5%と報告されています。
そのほか、イブプロフェンで起こりうる副作用には次の挙げる症状があります。
また、プロスタグランジンの作用によって、まれに軽い眠気をもよおすこともあります。
イブプロフェンの重篤な副作用
イブプロフェンによって起こる重篤な副作用には次の症状があります。
副作用の種類 | 特徴的な症状 |
---|---|
ショック アナフィラキシー |
かゆみ、じんましん、呼吸困難 などが起こる |
スティーブンス・ジョンソン症候群 (皮膚粘膜眼症候群) 中毒性表皮壊死融解症 |
目の充血、唇のただれ、 のどの痛み、高熱、 皮膚の広範囲に発疹・発赤など 激しい症状が起こる |
肝機能障害 | 倦怠感、黄疸、かゆみ、発疹、褐色尿 などが起こる |
腎障害 | 倦怠感、全身のむくみ、尿量の減少 などが起こる |
ぜんそく | 呼吸がヒューヒューと音を立てる |
無菌性髄膜炎 | 激しい頭痛、発熱、嘔吐 などが起こる |
再生不良性貧血 | 青あざ、倦怠感、動悸、出血 などが起こる |
無顆粒球症 | 急な高熱、のどの痛み、倦怠感 などが起こる |
これらの副作用が起こる頻度は非常に低いのですが、万が一副作用が起きたときのため、症状の特徴をチェックしておきましょう。
イブプロフェンを使用する時の注意点
副作用を防いで安全にイブプロフェンを使用するためには、解熱鎮痛剤に付属している添付文書などをよく読んで注意事項をきちんと守ることが大切です。
イブプロフェンの注意事項(OTC医薬品の場合)は、このような内容となっています。
してはいけないこと
副作用・事故が起こったり現在の症状が悪化しやすくなるので、次の項目にあてはまる人は薬を服用してはいけません。
- 15歳未満の小児
- 出産予定日12週以内の妊婦
- イブプロフェンでアレルギー症状を起こしたことのある人
- 胃・十二指腸潰瘍、血液の病気、肝臓病、腎臓病、心臓病、高血圧
- HIV治療薬ジドブジン(レトロビル)を服用中の人
また、イブプロフェンを服用する場合は次の注意事項を守る必要があります。
- ほかの解熱鎮痛薬、またはかぜ薬、鎮静薬と併用してはいけない
- 薬の服用前後に飲酒してはいけない
- 解熱鎮痛剤は5日以上の長期連用をしてはいけない
これらの注意事項を守らない場合、成分の毒性が高まって肝臓に大きな負担をかけたり事故が起こりやすくなったりして危険です。
相談すること
次の項目にあてはまる人は、服用する前に医師、薬剤師、登録販売者などに相談するよう注意が促されています。
- 病院の治療を受けている人
- ワルファリン、アスピリン製剤など特定の薬を服用中の人
- 妊婦または妊娠の可能性がある人
- 授乳中の人
- 高齢者(65歳以上)
- 薬などでアレルギー症状を起こしたことのある人
- 特定の疾患にかかったことのある人
(胃・十二指腸潰瘍、高血圧、血液の病気、肝臓病、腎臓病、
心臓病、高血圧、気管支ぜんそく、全身性エリテマトーデス、
混合性結合組織病、潰瘍性大腸炎、クローン病)
もし服用後に消化器の症状、口の渇き、発疹、かゆみなど副作用と思われる症状の出た場合は、すぐ薬の使用を中止して製品を持参のうえ、医師または薬剤師に相談することがすすめられています。
またショック、アナフィラキシー、スティーブンス・ジョンソン症候群などのような重篤な副作用が起こった場合は、ただちに受診し治療を受ける必要があります。
…OTC医薬品の使用で大きな事故が起こることはめったにありません。ただし、注意事項をうっかり見逃して薬の使い方を間違えてしまうと、思わぬトラブルが起こりやすくなるので、パッケージの添付文書にはきちんと目を通すようにしましょう。
また解熱鎮痛剤には、イブプロフェン単剤の製品もあれば、ほかの解熱鎮痛成分や補助成分がプラスされた製品もあります。
製品によっては、配合されているほかの成分が体質に合わない場合があるので、イブプロフェン系の解熱鎮痛剤を選ぶときは、配合されている成分を確認したり薬剤師に相談して自分のあったものを見つけることをおすすめします。
生理痛におすすめのイブプロフェン・我慢せずに早めに服用を
イブプロフェンは、このような特徴を持ち合わせていることから、このようなときにはイブプロフェンが主成分の解熱鎮痛剤をおすすめします。
- イブプロフェンはこんなとき・こんな人におすすめ
-
- 一刻も早く生理痛をしずめたいとき
- 毎月生理痛がある人
- 眠くなるのが困るとき
- 薬で胃が荒れるのが心配な人
生理痛のあるときに限定して使用すれば、くせになることもありません。生理痛がつらい時には無理にガマンしないで、早めに解熱鎮痛剤を飲んで痛みのもとをブロックしましょう。
イブプロフェンを配合した解熱鎮痛剤「イブ」「リングルアイビー」については以下の記事で詳しく説明しています。あわせてご覧ください。
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