おもい生理痛を治す漢方薬6つ。特徴にあわせて選ぼう

生理痛の感じ方には個人差があって、健康な状態なら痛みは少なく我慢できる範囲で済むものだと言われています。ただ実際には、多くの女性が生理痛に悩んでいるようですね。

鎮痛薬を使えば生理痛が消えて楽になるのですが、胃が荒れたり眠くなったりするので「鎮痛薬は飲まない」という人もけっこう多いようです。

そこで試してみたいのが、副作用の心配が少ない漢方薬。生理痛の起こる原因を解決しながら、おだやかに生理痛を緩和してくれますよ。

この記事では、漢方薬が生理痛に効く理由と、生理痛に効く漢方薬を紹介していきます。

漢方薬はすごい!やさしく生理痛をしずめてくれる理由は

生理痛は、子宮が収縮する時に感じる下腹部痛や腰痛のこと。子宮の収縮は経血を子宮から押し出すために必要な現象です。健康な人なら痛みを感じることは少ないと言われますが、ほとんどの人が生理痛を経験しています。

生理痛がたまにしかない人は約3割で、ほとんどの人は毎月または2~3か月に1回は生理痛を経験していることが分かっています。また、毎月生理痛がある人の約7割がひどい生理痛を経験しているとのことです。
(第一三共ヘルスケア 日本人の「痛み」実態調査「Ⅱ生理痛編」より)

ところが、成分の強さや副作用を気にして鎮痛薬には頼らず、生理痛を我慢して過ごす人も少なくないようです。

生理痛を放置したり、痛みを我慢して過ごすのはあまり良いことではありません。そこで、生薬の自然な力がやさしくはたらきかける漢方薬で生理痛を緩和させることもおすすめします。

漢方薬はドラッグストアでもよく見かけるようになりました。女性向けのものも多くなっています。その中で生理痛を緩和する主な漢方薬には、次の6種類があります。

生理痛を緩和する漢方薬
  • 当帰芍薬散
  • 桂枝茯苓丸
  • 桃核承気湯
  • 加味逍遙散
  • 温経湯
  • 五積散

生理痛の主な原因は「冷え」

漢方薬は、生理に伴う下腹部痛、腰痛、足の引きつる感じをやわらげ、同時に、必要以上に生理痛が強くなっている原因にはたらきかけ、生理痛の起こりにくい体質へと導いていきます。

生理痛の原因のほとんどは、子宮や卵巣には異常がないのに起こる「機能性」の生理痛です。漢方医学の概念では、体質のことを「症」と呼び、次のような症を持つ女性は機能性の生理痛を起こしやすいと考えます。

漢方の症 特徴
血虚(けっきょ) 貧血症状があり、血液の流れが弱い
お血(おけつ) 血行が滞り、体が冷えやすい
気逆(きぎゃく) 上半身に熱がたまり、足腰が冷えている
水滞(すいたい) 体に余分な水分がたまって、足腰が冷えやすい

漢方医学の「症」に出てくる用語は、やや意味がわかりにくいのですが、それぞれの特徴をこのように並べてみると、どれも「体の冷え」に関係していることがわかりますよね。

女性の体は、冷えると子宮の収縮が強くなったり痛みを強く感じやすくなったりします。そこで、血行を促進させる薬効を持つ漢方薬によって体を温めると、生理痛をおだやかに緩和させることができるようになるのです。

器質性の生理痛、月経困難症も漢方で対応できる

また漢方薬は、機能性の生理痛だけでなく、子宮筋腫、子宮内膜症、子宮腺筋症など子宮の病気が原因で起こる「器質性」の生理痛にも対応することができます。

病気を治すには病院で受ける治療が必要ですが、漢方薬を併用すると体質が改善されて自然治癒力が高まるので、病気の回復を早めることができるようになります。

人によっては、生理痛がかなり強く、時に寝込んだり鎮痛薬が手放せないほど辛くなることがあります。このような状態は「月経困難症」と呼ばれ、婦人科で治療を受ける対象になりますが、もちろん漢方薬は月経困難症の改善にも力を発揮してくれます。

また、ホルモンバランスを整えてくれるので、生理不順やPMS、不正出血といった生理に関する悩みも改善してくれます。

漢方の症「気・血・水」については、女性のホルモンバランスを整える漢方一覧。優しく効くヒミツとは?でも説明しています。

生理のトラブルに用いられることが多いのは「当帰芍薬散」

当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)は、古くから「女性の聖薬」「女性向けの漢方薬といえば当帰芍薬散」と言われるほど広く親しまれ、多くの女性の悩みを解決してきました。

当帰芍薬散に配合されている次の生薬が生理痛を緩和します。

  • トウキ(セリ科の植物の根)…血行促進作用がある
  • シャクヤク(ボタン科の植物の根茎)…鎮痛作用・血行促進作用がある
  • ブクリョウ((きのこの仲間))…鎮痛作用がある
  • ソウジュツ(キク科の植物の根茎)…余分な水分を排出する
  • センキュウ(キク科の植物の根茎)…鎮痛作用・血行促進作用がある

生薬が生理中の冷えやむくみを取って、強くなっている生理痛を緩和させます。

当帰芍薬散はこんなタイプの人におすすめ

当帰芍薬散は、漢方の症で言う「血虚」「水滞」の体質を改善する作用があります。また、次のような症状がいくつか当てはまる体質の人に適しています。

  • 生理の後半に生理痛を感じる
  • 中肉中背からやせ型
  • 虚弱体質、胃腸が弱い
  • 冷え性
  • 色白で顔色が悪い、目のクマができやすい
  • むくみやすい
  • めまい、動悸、低血圧、貧血などがある
  • 排尿回数が多く、1回の尿量は少ない

当帰芍薬散は、血液を作る作用があり、貧血気味で体調が悪くなりやすい若い女性に手も適しています。またホルモンバランスを整えるので、不妊症の治療を受けている女性にもよくすすめられます。

当帰芍薬散の効能

当帰芍薬散は、上記に該当する体質の人にみられる次の諸症状を改善します。

当帰芍薬散の効能 生理痛
月経の異常
生理痛
更年期障害
産前産後・流産後の貧血
疲労倦怠
めまい
むくみ
立ちくらみ
足腰の冷え症
頭重
肩こり
腰痛
しみ
耳鳴り
しもやけ

(参照…ツムラ 製品情報「ツムラ漢方当帰芍薬散料エキス顆粒」)

当帰芍薬散を使用する前に注意すること

当帰芍薬散は胃腸の弱い人向けの薬ですが、中には胃の不快感や下痢などの副作用を起こす人もいるので、胃腸の弱い人は薬剤師や医師に相談してから、指示通りに薬を服用します。

「お血」で生理前半に生理痛が強くなる人には「桂枝茯苓丸」

桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)は、漢方の症で言う「お血」を取って、生理痛を緩和してくれる漢方薬です。当帰芍薬散のように生理に関する不調に用いられることの多い薬です。

桂枝茯苓丸に配合されている次の生薬が生理痛を緩和します。

  • ケイヒ(シナモンの一種の樹皮)・ブクリョウ…鎮痛作用がある
  • ブクリョウ(きのこの仲間)…鎮静作用がある
  • シャクヤク…血行を促進させる、筋肉を弛緩させる
  • トウニン(桃の種の核)…鎮痛作用・血行促進作用がある

桂枝茯苓丸は、鎮痛作用や血行を促進させる作用があるので、冷えによって強くなっている痛み、器質性月経困難症の強い痛みを緩和する作用も期待できます。

桂枝茯苓丸はこんなタイプの人におすすめ

桂枝茯苓丸は、漢方の症で言う「お血」「気逆」の体質を改善する作用があります。また、次のような症状がいくつか当てはまる体質の人に適しています。

  • 生理の前半に生理痛を感じる
  • 生理前から下腹部痛がある
  • 体力がある
  • 比較的体格が良い
  • 上半身はのぼせやすく、足腰は冷えやすい
  • シミやあざができやすい

気逆というのは、下半身の血行が悪いために上半身に熱がこもり、「気」の流れが乱れて頭に血がのぼるために怒りっぽくなる症状です。生理中にのぼせてイライラする人にも、桂枝茯苓丸が適しています。

桂枝茯苓丸の効能

桂枝茯苓丸は、上記に該当する体質の人にみられる次の諸症状を改善します。

桂枝茯苓丸の効能 生理痛
月経の異常
月経不順
血の道症
更年期障害
肩こり
頭重
めまい
打ち身
しみ
にきび
湿疹
しもやけ

(参照…ツムラ 製品情報「ツムラ漢方桂枝茯苓丸エキス顆粒」/クラシエ 漢方セラピー「桂枝茯苓丸」)

桂枝茯苓丸を使用する前に注意すること

体力のない人、やせ型の人には向いていないので、ほかの薬を選びます。

便秘がちで生理前にのぼせる人は「桃核承気湯」

桃核承気湯(とうかくじょうきとう)は、「お血」に「気逆」を伴い、下腹部が冷えて痛みが強くなるタイプの生理痛を緩和します。

桃核承気湯に配合されている次の生薬が生理痛を緩和します。

  • ケイヒ…鎮痛作用がある
  • ダイオウ(タデ科の植物の根)…緩下作用がある
  • トウニン…鎮痛作用・血行促進作用がある
  • カンゾウ(マメ科の甘みを持つ植物)…鎮痛作用がある

お通じや消化機能を促進させる生薬が中心に配合されているので、便秘のせいで余計に辛くなる下腹痛やお腹の張り、吐き気などを解消する効果があります。

桃核承気湯はこんなタイプの人におすすめ

桃核承気湯は、次のような体質の人に適しています。

  • 生理痛が強い
  • 体力がある
  • どちらかというと体格が良い
  • 便秘がち
  • のぼせてイライラしやすい
  • 血圧が高い

桃核承気湯の効能

桃核承気湯は、上記に該当する体質の人にみられる次の諸症状を改善します。

桃核承気湯の効能 生理痛
月経困難症
生理不順
生理中や産後に起こる精神不安
腰痛
高血圧に伴う頭痛・肩こり・めまい
打ち身

(参照…ツムラ 製品情報「ツムラ漢方桃核承気湯エキス顆粒」/クラシエ漢方セラピー「桃核承気湯」)

桃核承気湯を使用する際に注意すること

体力のない人には適していません。胃腸の弱っている人は、薬剤師や医師に相談の上で使用します。

また、大黄(ダイオウ)や甘草(カンゾウ)の配合された他の漢方薬と併用すると、副作用が出やすいので、漢方薬をすでに飲んでいる人は注意します。

足腰は冷えて顔がのぼせる人には「加味逍遥散」

加味逍遙散(かみしょうようさん)は、当帰芍薬散、桂枝茯苓丸と共に婦人用に使われることが多い漢方薬です。

「お血」「血虚」による血行障害に「気逆」を伴い、顔はのぼせるけれど足腰が冷えるという状態を改善し、生理中の不快な症状を緩和してくれます。

加味逍遙散に配合されている次の生薬が生理痛を緩和します。

  • サイコ(セリ科の植物の根)…鎮痛・鎮静作用がある
  • シャクヤク…鎮痛作用・血行促進作用がある
  • トウキ…血行促進作用・貧血を改善する作用がある
  • ブクリョウ・カンゾウ…鎮痛作用がある
  • ショウキョウ(生姜)・ハッカ…鎮静作用・体を温める作用がある

加味逍遙散はこんなタイプの人におすすめ

加味逍遙散は、次のような体質の人に適しています。

  • 体格は中程度
  • 体力は中等以下
  • イライラしやすい、カーッとなりやすい
  • 不安を感じやすい
  • 急に顔がほてる、汗をかく
  • 顔はほてるけど足腰は冷えやすい

「血の道症」で顔がのぼせてイライラする女性にぴったりで、更年期障害や若い女性の自律神経失調症の改善にもよく用いられます。

加味逍遙散の効能

加味逍遙散は、上記に該当する体質の人にみられる次の諸症状を改善します。

加味逍遙散の効能 生理痛
生理不順
更年期障害
冷え症
血の道症
不眠症
虚弱体質

(参照…ツムラ 製品情報「ツムラ漢方加味逍遙散エキス顆粒」)

加味逍遙散を使用する際に注意したいこと

カンゾウは、さまざまな漢方薬に配合されるオールマイティな生薬です。

ただ、大量摂取で副腎皮質ホルモン剤の強い副作用に似た「偽アルドステロン症」を起こすことがあるので、カンゾウを配合した他の薬を飲んでいる場合は、加味逍遙散を使用する前に薬剤師か医師に相談します。

「血虚」でお腹が冷えて生理が重くなる人には「温経湯」

温経湯(うんけいとう)は、漢方の症で言う「血虚」の体質を改善することで、体を温めて生理痛を緩和してくれる漢方薬です。

温経湯に配合されている次の生薬が生理痛を緩和します。

  • ハンゲ(サトイモ科の植物の球茎)…鎮静作用がある
  • バクモンドウ(ユリ科の植物の根)…強壮作用がある
  • トウキ・シャクヤク…貧血を改善する
  • ボタンピ(ボタンの根)・センキュウ・ケイヒ…血行促進作用がある
  • カンゾウ…鎮痛作用がある

血行を促進する生薬や滋養を高める生薬が全身の血液のめぐりやホルモンバランスを改善して、体調を整えていきます。肌や髪に潤いを与える作用があるのも特徴です。

温経湯はこんなタイプの人におすすめ

温経湯は、次のような症状がいくつか当てはまる体質の人に適しています。唇の乾燥は、温経湯が効きやすい人の特徴ともされています。

  • 体力がない
  • 冷え症
  • 手足がほてる
  • 皮膚や唇が乾燥している
  • あかぎれ、主婦湿疹になりやすい
  • 不妊症

温経湯の効能

温経湯は、上記に該当する体質の人にみられる次の諸症状を改善します。

温経湯の効能 生理痛
生理不順
おりもの
更年期障害
足腰の冷え
不眠
神経症
湿疹
しもやけ

(参照…ツムラ 製品情報「106ツムラ温経湯エキス顆粒」

温経湯を使用する際に注意すること

胃腸の弱い人には合わない場合があるので、薬剤師や医師に相談の上で使用します。また、カンゾウが配合されているので、他の薬と甘草が重複しないように注意します。

体が冷えると生理痛が強くなる人には「五積散」

五積散(ごしゃくさん)という名前は、中医学の「気・血・痰・寒・食」の5つが滞っている状態を解消する、という意味があり、冷えや痛みを緩和させる効能があります。

五積散に配合されている次の生薬が生理痛を緩和します。

  • ソウジュツ…余分な水分を排出する
  • チンピ(乾燥させたミカンの皮)・…消化機能を促進する
  • マオウ(マオウ科の植物の地下茎)…発汗作用・利尿作用がある
  • ハンゲ・トウキ…体を温める
  • コウブシ(カヤツリグサ科の植物の根茎)・ブクリョウ・カンゾウ…鎮痛作用がある
  • ビャクシ(セリ科の植物の根)…鎮痛作用がある・おりものを抑える

五積散に配合される生薬は16種類、これは他の薬と比べても種類がかなり多いです。痛みをしずめる成分、血行を促進する成分、余分な水分を排出させる成分などがバランス良く配合され、慢性的な不調を穏やかに改善したい時に適しています。

五積散はこんなタイプの人におすすめ

五積散は、次のような体質の人に適しています。

  • 体力は中くらい
  • 冷えると生理痛が辛くなる
  • 冷たい食べ物・飲み物ばかりとっている
  • 冷房のきいた部屋で過ごすことが多い
  • 胃腸が弱い
  • 足腰が冷える
  • 冷えると腰や関節が痛む

五積散は、素足やミニスカートを好んだり、冷たい食べ物や飲み物ばかり食べたりして体が冷え、生理痛や腰痛、胃腸のトラブルを起こしやすい若い女性にもおすすめです。

五積散の効能

五積散の効能 生理痛
胃腸炎
かぜ
腰痛
冷え症
更年期障害
神経痛
関節痛

(参照…ツムラ 製品情報「063ツムラ五積散」)

五積散を使用する際に注意すること

マオウは、交感神経を興奮させる作用があるため、虚弱体質の人、発汗量の多い人、高血圧や心臓疾患のある人に五積散は適していません。またカンゾウが配合されているので、他の薬とカンゾウが重複しないように注意します。

漢方薬は女性の健康と美をサポートしてくれる強い味方です

漢方薬を使用することで何より嬉しいのは、漢方薬が効くと来月以降の生理がもっと楽になること、さらに女性ホルモンのバランスが整うために心身が元気になったり、髪や肌がきれいになったりするメリットもついてくるというところです。

また月経前症候群、更年期障害、血の道症といった女性特有の不定愁訴(はっきりしない不調が次々と起こること)をひとまとめに緩和するのも漢方薬ならではの強みです。

こういった作用を持つことから、漢方薬は女性の味方と言われることが多いのでしょう。

漢方薬への興味が高まった方は、早速、薬局で漢方薬をチェックしてみてください、利用する際は薬剤師または婦人科の先生に相談することをお薦めします。ご自分に合った漢方薬を見つけて、毎月を軽快にお過ごしくださいね。

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