生理中に鎮静剤は飲んでいい?鎮痛剤と鎮静剤の違いを知ろう

生理痛の時に使うのは鎮痛剤?それとも鎮静剤?

市販薬には鎮痛剤(ちんつうざい)と鎮静剤(ちんせいざい)がありますが、これらの薬は、どのような時に使えばよいのかご存知でしょうか。

生理痛の時に鎮痛剤や鎮静剤を使ってもいいの?鎮痛剤と鎮静剤は同じもの?ちょっとややこしい鎮痛剤・鎮静剤と生理痛の関係についてお話してみたいと思います。

生理痛をしずめるのは鎮静剤?痛み止めには色々な呼び方がある

生理の時には、生理痛をしずめるいわゆる「痛み止め」を使う人が多いですよね。

「痛み止め」という名前が呼びやすいのですが、正しくは「解熱鎮痛剤」という薬になります。普段は「鎮痛剤」「鎮静剤」など色々な呼び方も耳にしますね。

その解熱鎮痛薬について、まずは薬局へ痛み止めを買いに来たAさんのエピソードをご覧ください。

鎮静剤を探そうとしていたAさんの体験談
生理痛・頭痛で痛み止めを使うことの多いAさんは、買い置きの薬がなくなったのでドラッグストアへ買いに行きました。

しばらく商品を見ながらキョロキョロと探していると、薬剤師が「何かお探しですか?」と声をかけてきてくれました。

Aさんが「鎮静剤を買いに来たんです。」と答えると、薬剤師は「鎮静剤はこちらですよ。」と鎮静剤のコーナーへ案内しました。

ところがそこに痛み止めがなかったので、Aさんが戸惑っていると、薬剤師がその様子に気づいて声をかけます。「どのようなものをお探しでしょうか?」

Aさんは「○○です。」と普段使っている痛み止めの商品名を言いました。すると薬剤師は「あっ」と納得した顔をして「○○はこちらです。」と別のコーナーへAさんを連れて行きました。

その商品棚には普段使っている痛み止めが並んでいて、ホッとするAさん。薬剤師が最初に案内した場所にいつもの痛み止めがなくて不思議に思ったAさんが、後で鎮静剤のコーナーを確認すると、このような効能をうたったパッケージの薬が並んでいました。

  • イライラ・緊張をしずめる
  • 寝つきが悪い方に
  • 一時的な不眠を解消する

どうやら、これは痛み止めとは違うタイプの薬のようです。そこで、今まで痛み止めを「鎮静剤」と呼んでいたAさんは、鎮静剤が痛み止めとはまた別の種類の薬だということに気づきました。

このように、鎮痛剤と鎮静剤は名前が似ていて混同している人も意外と多く、解熱鎮痛剤が「鎮静剤」と表現されている情報を目にすることもあります。

ただし、鎮静剤というキーワードを使ってしまうと別の薬を指すことになるので、痛み止めをよく使う人は、少なくとも鎮痛剤と鎮静剤の違いについては、はっきり区別できるようにしておくことをおすすめしたいです。

鎮痛剤と鎮静剤の違いをひとことで簡単に言い分けると、

  • 鎮痛剤は体の痛みをやわらげる薬
  • 鎮静剤は神経の興奮を抑えて気持ちを落ち着かせる薬

ということになります。

それでは、鎮痛剤と鎮静剤それぞれの特徴をもう少し詳しくチェックしてみましょう。

鎮痛剤(解熱鎮痛剤)の特徴、成分、主な用途は?

私たちが生理痛や頭痛をしずめる目的で購入しているのは、鎮痛剤(解熱鎮痛剤)のほうです。「痛み止め」「鎮痛剤」と呼ばれる市販薬にあたります。また「頭痛薬」「熱さまし」も解熱鎮痛剤と同じものです。

鎮痛剤は2つのタイプがある

鎮痛剤というのは、体の痛みをしずめる薬なのですが、色々な種類の成分があり、痛みを感じさせないようにする仕組みも異なります。

鎮痛剤を大きく分けると主に次の2つがあり、それぞれ痛みの強さや原因によって使い分けられています。

鎮痛剤の系統 用途 鎮痛剤の種類
非オピオイド系
(麻薬を使わない薬)
頭痛・生理痛・歯痛
など比較的軽い痛み
非ステロイド性消炎鎮痛剤
(NSAID)
アセトアミノフェン
オピオイド系
(医療用麻薬)
非オピオイド系が
効かない強い痛み
(がんの疼痛など)
モルヒネ
フェンタニル

「オピオイド」というのは、麻薬系の鎮痛成分のことです。今回のテーマである市販の「鎮静剤」「鎮痛剤」にはオピオイドは使われないので、主に非オピオイド系の鎮痛剤について説明を進めていきたいと思います。

解熱鎮痛剤は熱と痛みを抑える薬

私達が生理痛や頭痛などに使っている解熱鎮痛剤には、「NSAID」と呼ばれるタイプの消炎鎮痛薬や「アセトアミノフェン」という解熱鎮痛剤が配合されています。(アセトアミノフェンもNSAIDの一種と呼ばれることもあります。)

解熱鎮痛剤のパッケージにも表示されている身近な成分なので、鎮痛剤の種類と名前を紹介しておきます。

鎮痛剤の系統 種類 痛みを止める仕組み
NSAID ロキソプロフェン
イブプロフェン
アセチルサリチル酸
(アスピリン)
イソプロピルアンチピリン
プロスタグランジンの
産生をおさえることで
痛み・発熱・炎症をしずめる
それ以外の薬 アセトアミノフェン 中枢神経にはたらいて
痛み・発熱をしずめる

ロキソプロフェンは第一三共ヘルスケア「ロキソニンS」に、イブプロフェンはエスエス製薬「イブ」やサトウ製薬「リングルアイビー」などに配合されていることでおなじみですね。

これらNSAID系の消炎鎮痛剤はよく効きますが、15歳以下の人には使えません。また、副作用で胃が荒れやすくなります。

アセトアミノフェンは胃を荒らさず作用が穏やかです。15歳以下の解熱鎮痛剤や赤ちゃんの解熱用の座薬にも使われています。

そして、市販の解熱鎮痛剤は各メーカーによって、使われている成分の処方の仕方が少しずつ異なります。鎮痛成分のメリット・デメリットを考慮して複数の成分や補助成分と一緒に処方し、体にやさしくよく効く工夫をおこなっているのです。

病院では麻薬系の鎮痛薬を投与することも

病院で使うオピオイド系の鎮痛剤は、医療用の安全な麻薬によって中枢神経をブロックし、痛みを感じさせないようにする薬です。

強い痛みに用いられますが、依存性があって効きにくくなったり、吐き気や眠気などの副作用を伴うので、正しい使い方をする必要があります。

麻薬という言葉が出てくるので「鎮痛剤って怖いものなのかな」と思う人もいるかもしれませんね。

しかし、オピオイド系の鎮痛剤は専門知識を持った医師が必要に応じて処方するもので、患者さんがいわゆる世間一般にイメージされているような怖い麻薬中毒になることは、まずあり得ません。

また、市販の解熱鎮痛薬に使われているのは、非オピオイド系の鎮痛剤のみで麻薬系の成分とは一切関係ないので、麻薬が持つ依存性や副作用が起こる心配はありません。

市販の痛み止めが癖になる心配はない

「生理痛に痛み止めを使い続けると、癖になって効きにくくなる」と心配する声も聞かれますよね。

癖になるとは、その薬に耐性がついてしまって、より多くの薬を使わないと効かなくなってしまうことです。

依存性があって使い続けると効きにくくなりやすいのは、病院で使われるオピオイド系の鎮痛剤のことです。NSAIDやアセトアミノフェンに依存性はないので、基本的に市販の痛み止めを使い続けてもクセになる心配はありません。

むしろ、生理痛を我慢して日常生活があれこれと制限されるより、痛み止めを使って痛みを楽にした方が生理の間も快適に過ごせるので、むやみに鎮痛剤をこわがらずに上手に付き合っていくことをおすすめしたいです。

ただ、鎮痛剤はどれも「一時的」な症状をしずめるための薬で、痛みのもととなる病気やケガを回復させる効能は持ち合わせていません。

つまり鎮痛剤を飲み続けても痛みの原因は解決されないので、生理痛や頭痛が長く続く人はいつまでも鎮痛剤に頼らず、早めに病院で検査や治療を受けて病気やケガを治すことが必要になります。

鎮静剤の特徴、成分、主な用途は?

鎮静剤は、脳神経の興奮をしずめて心身をリラックスさせる薬です。おもに病院で医療用医薬品として、精神医療や治療の補助をする目的に使われます。

鎮痛剤との違いは、痛みを止める機能を持っていないところです。ただし、鎮静剤は心身をリラックスさせることで、緊張が起こす筋肉のこわばりや痛みをほぐすので、鎮痛剤の補助的な立場で使われることも多くなっています。

病院で使われている鎮静剤

病院では、次のような用途で鎮静剤が広く用いられています。

  • 手術の麻酔前に投与して、緊張を取り除いたり麻酔を効きやすくしたりする
  • 胃カメラ、大腸内視鏡検査、歯の治療の痛みや不快感をやわらげる
  • 不眠症の治療
  • 不安や精神的な緊張をやわらげる

現在、日本で鎮静剤に使われる薬は「ベンゾジアゼピン系」と呼ばれる系統のものがほとんどで、鎮静作用、催眠作用、抗不安作用、けいれんや筋肉の緊張をしずめる作用などを持っています。例えば、よく知られるものには睡眠薬や抗不安剤などがあります。

これらは短期間にとどめて使用すれば安全性の高い薬なのですが、依存性や日中の眠気、血圧低下などの副作用が出やすいので、医師の指導のもとに適切な使い方をしなければなりません。

抗不安薬や睡眠薬はストレスの溜まっている現代人が使いたいと思う系統の薬かと思いますが、市販薬では出まわっておらず、手に入れるには受診と処方せんが必要です。

市販の鎮静剤

市販の鎮静剤には、一時的な不眠を改善する「睡眠改善薬」とイライラや不安をしずめる「静穏剤」と呼ばれる薬があります。

嬉しいのは、処方箋なしで薬局やドラッグストアから気軽に購入できるところ。依存性や副作用の心配も少なくなっています。

ただし、病院で使われる鎮静剤よりおだやかな成分なので、作用も強くはありません。うつ病や不安障害、深刻な不眠症などは市販の鎮静剤では解決できないので、早めの受診がすすめられます。

市販薬に使われる鎮静成分には次に挙げるものがあります。

鎮静成分 作用 用途
アリルイソプロピルアセチル尿素 鎮静作用がある 解熱鎮痛剤
感冒薬
ブロムワレリル尿素 鎮静作用・催眠作用がある 静穏剤
解熱鎮痛剤
感冒薬
酔い止め
塩酸ジフェンヒドラミン 抗ヒスタミン作用がある
副作用で眠気が起こる
鼻炎薬
かゆみ止め
睡眠改善薬
酔い止め
生薬・ハーブ おだやかな鎮静作用がある
眠気は起こらない
静穏剤

生薬・ハーブ以外の成分はおだやかな催眠作用を持っているので、感冒薬や鼻炎薬を飲むと副作用として眠気が出てしまうことがあります。睡眠改善薬は、鎮静剤の眠くなる副作用を逆手にとって作られたものです。

これらの成分を配合した市販の鎮静剤では、主に次の製品があります。

製品名 主な成分 効能
ウット
(伊丹製薬)
ウット商品イメージ
ブロモバレリル尿素
アリルイソプロピルアセチル尿素
ジフェンヒドラミン塩酸塩
不安やイライラを
しずめる
奥田脳神経薬
(奥田製薬)
奥田脳神経薬商品イメージ
ブロモバレリル尿素
カフェイン水和物
ニンジン末・チョウトウ末ほか
6つの生薬
イライラ・頭痛
肩こりの緩和
アロパノール
(全薬工業)
アロパノール商品イメージ
漢方薬「抑肝散」に配合される
7つの生薬
神経症・不眠・
夜泣き・血の道症の
症状緩和
ドリエル
(エスエス製薬)
ドリエル商品イメージ

ネオデイ
(大正製薬)
ネオデイ商品イメージ

ジフェンヒドラミン塩酸塩 不眠を改善する

生理痛をしずめたい時には鎮痛剤を使いましょう

基本的に、鎮静剤は痛み止めではないので生理痛をしずめる効果は期待できません。似てはいますが、鎮痛剤の代わりとして鎮静剤を使うことも難しいです。生理痛が始まったら、早めに解熱鎮痛剤を服用することをおすすめします。

ちなみに、鎮静剤に配合される「アリルイソプロピルアセチル尿素」「ブロムワレリル尿素」は、解熱鎮痛剤にも配合されることが多い成分です。

これらは、鎮痛剤の作用を高めたり心身をリラックスさせて生理による冷えや筋肉のこわばりをやわらげたりする作用があり、生理痛を早く楽にしてくれます。

ですから、生理痛がつらくて体を休めたい時には、鎮静剤入りの解熱鎮痛薬を利用してゆっくり休むのがおすすめです。

逆に仕事や授業などで眠気が起こると困るという人は、鎮静剤が入っていない解熱鎮痛剤を選ぶと良いでしょう。

詳しくは眠くならない生理痛薬はこれ!各シリーズで成分を徹底比較でも説明しています。

生理痛に鎮静剤は飲んではダメ?もし鎮静剤を飲むと…?

では、生理中に静穏剤や睡眠改善薬などの鎮静剤を使うとどうなるのでしょうか。

鎮静剤は鎮痛剤のように痛みをしずめる作用は持っていないので、強い生理痛に効かないことは想像がつきますよね。

ただし、鎮静剤の得意とするのは、生理に伴うイライラやストレス、ストレスが原因で強くなっている冷えや痛みをやわらげる作用なので、人によっては鎮静剤でも生理が楽になる場合があります。

ですから、生理中に生理痛よりもイライラや落ち込みなど精神的な不調のほうが気になるという人は、鎮静剤を選ぶのもおすすめといえるでしょう。お店で薬剤師のアドバイスも参考にされ、ご自分に合った製品を選んでください。

鎮静剤はこんな使い方も

ホルモンバランスの乱れによるPMS(月経前症候群)や生理中のイライラ・頭痛に悩んでいる人は、生薬・ハーブ系の鎮静剤もおすすめします。

有効成分が生薬・ハーブで作られている鎮静剤
  • アロパノール(全薬工業)
  • レスフィーナ(塩野義製薬)
  • ノイ・ホスロール(救心製薬)
  • イララック(小林製薬)

植物系の鎮静剤は生理痛をしずめる作用がおだやかですが、複数の生薬やハーブが自律神経やホルモンのバランスを整えるので、女性特有のイライラ、頭痛、冷えといった不快な症状をひとまとめに和らげる効果も期待できます。

生理中に鎮静剤を使う時の注意点

注意したいのは、製品の注意事項にも記載されているように、解熱鎮痛剤をすでに服用している人は鎮静剤を併用してはいけない、ということです。

併用すると鎮静成分が鎮痛成分にはたらきかけ、必要以上に体に強い作用を起こしてしまうおそれがあります。

また、鎮静剤にはほかにも併用してはいけない薬があります。飲み合わせに注意しましょう。

鎮静剤と併用してはいけない薬…解熱鎮痛剤、かぜ薬、鼻炎用の薬、酔い止めなど

使用法が不適切だと、副作用として日中の眠気や倦怠感など副作用が強く出る可能性があるので、鎮静剤は説明書の注意事項に従って正しく服用しましょう。

解熱鎮痛剤と鎮静剤を上手に使い分けましょう

鎮痛剤と鎮静剤の関係について、最後におさらいをしておきます。

  • 「鎮痛剤」「鎮静剤」「痛み止め」と呼ばれるけど、正式な名前は「解熱鎮痛薬」
  • 鎮痛剤と解熱鎮静剤は同じ薬ではない
  • 鎮静剤はイライラや不安をしずめる薬なので、生理痛にはあまり効かない
  • 解熱鎮痛薬には、補助成分として鎮静剤が配合されているものが多い
  • 鎮静剤は眠気を起こす副作用に注意

解熱鎮痛剤と鎮静剤を上手に使い分け、快適な毎日をお過ごしください。ちょっとややこしいお話だったかもしれませんが、ぜひ痛み止めを選ぶ時のヒントにしていただけると幸いです。

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